大判例

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福岡高等裁判所 昭和26年(ネ)139号・昭26年(ネ)533号 判決

控訴代理人は「原判決を取消す。被控訴人等の請求を棄却する。訴訟費用は第一、二審とも被控訴人等の負担とする」という判決を求め、被控訴代理人は控訴棄却の判決を求めた。

当事者双方の事実上の陳述並に証拠の提出援用認否は、被控訴代理人において、第一審原告堀内弘は昭和二十五年六月四日死亡し被控訴人堀内正、堀内ユキヱ、堀内アイの三名が共同相続人としてその権利義務を承継した。本件裁決書の謄本が訴願人である訴外南平四郎に交付された日時は不明であると陳述した。(証拠省略)控訴代理人において、被控訴代理人主張の死亡及び相続の事実は認める。本件裁決書の謄本が訴願人である訴外南平四郎に交付されたのは昭和二十三年十二月三日であると陳述した。(証拠省略)ほか、原判決事実摘示と同一であるからこれを引用する。

三、理  由

控訴人は、本訴は出訴期間経過後に提起された不適法の訴であるから却下すべきものであると主張するので、先づこの点について検討しよう。本訴は大村市竹松地区農地委員会が昭和二十三年五月十七日自作農創設特別措置法に基いて定めた農地売渡計画に対し、訴外南平四郎から異議の手続を経て提起された訴願について、訴願裁決庁である控訴人が同年十一月十二日附を以てなした訴願を認容する旨の本件裁決の取消を求めるものである。自作農創設特別措置法による行政庁の処分の取消又は変更を求める訴は、その処分のあつたことを知つた日から一箇月以内で且つ処分の日から二箇月以内に提起しなければならないことは同法第四十七条の二第一項に規定するとおりであつて、その処分につき訴願の裁決を経た場合には、右の期間は訴願の裁決のあつたことを知つた日又はその裁決の日からこれを起算すべきことは行政事件訴訟特例法第五条第四項によつて明である。ところで行政処分の取消又は変更はその処分が効力を生じたことを前提とするものであるが、訴願の裁決は文書を以てこれをなし又その裁決書の謄本は訴願人に送付しなければならないことは訴願法第十四条、自作農創設特別措置法施行規則第四条に規定するところであつて、訴願人以外の利害関係人に裁決を告知すべき旨の規定はないから、訴願の裁決はその謄本を訴願人に送付することによつて完全に効力を生ずるものといわなければならない。従つて自作農創設特別措置法による行政庁の処分について訴願の裁決を経た場合に処分の取消又は変更を求める訴を提起せんとする者は、訴願人であるとその他の利害関係人であるとを問わずその者が裁決のあつたことを知つた日から一箇月以内で且つ裁決の日から二箇月以内に出訴しなければならない。被控訴人等は、自作農創設特別措置法第四十七条の二第一項に「当事者」とあるのは行政処分の相手方を指称し、本件についていえば訴願人である訴外南平四郎がこれに当るので、訴願人でない被控訴人又はその先代の提起した本訴の出訴期間は行政事件訴訟特例法(第五条)によるべきであると主張するけれども、自作農創設特別措置法第四十七条の二第一項に「当事者」とあるのは、同条項自体並に同条項に対し一般規定の関係にある行政事件訴訟特例法第五条との対照上明なように、当該行政訴訟の当事者を指すものであつて、これを行政処分の相手方に限るべき何等の根拠もないから、被控訴人等の主張は理由がない。ところで成立に争のない乙第一号証の一、二、証人犬塚一郎及び被控訴本人山下好吉の原審及び当審における供述の各一部によれば、本件裁決書の謄本は竹松地区農地委員会を経て遅くも昭和二十三年十二月七日までに訴願人である訴外南平四郎に交付されたこと並に被控訴人山下好吉及びその他の被控訴人等の先代である第一審原告亡堀内弘は訴願人南平四郎の訴願を認容した本件裁決は到底納得することができないという理由で該裁決の事実認定の誤りを指摘して、昭和二十三年十二月七日附の「売渡訴願裁決に対する再審議願」と題する書面を以て控訴人に対し再審議を願出た事実を認むるに充分であるから、被控訴人好吉及び第一審原告亡弘は右再審議願書の日附当時はすでに本件裁決のあつたことを知つていたものと認めなければならない。前示証人及び被控訴本人の供述中には右認定に反する供述もあるけれども、その部分の供述には曖昧な点や前後矛盾した点が少くないのみならず、前示乙第一号証の一、二に照して到底信用することができない。しかるに本訴が提起されたのは記録上明なように昭和二十四年一月十三日であつて被控訴人好吉及び第一審原告亡弘が本件裁決のあつたことを知つた日から一箇月余を経過して提起されたものであるから、本訴は不適法として却下する外はない。

そこで前示説明と異る独自の見解に基き本訴を適法と認め進んで本案の請求を認容した原判決は不当であつて、本件控訴は理由があるから民事訴訟法第三百八十六条、第九十五条、第八十九条を適用して主文のとおり判決する。

(裁判官 小野謙次郎 竹下利之右衛門 中園原一)

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